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【ネタバレ注意】武井咲『黒革の手帖』を原作&米倉涼子版とともに考察してみた

 

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7月20日から武井咲主演のドラマ『黒革の手帖』がはじまります。楽しみですね。
このドラマ、2004年に米倉涼子主演で放送されていました。


松本清張 没後25年となる2017年──
「清張史上最強」と言われるあの“悪女”が甦る!

 

と、今回の詳しい情報は公式サイトを見ていただくことにして。

www.tv-asahi.co.jp


ヒロインである銀座のママ・元子(武井咲)の悪女っぷりがみどころとのこと。

 

さて、今日は前作・米倉涼子版(2004年)を視聴していた&原作を読んだことのある私が『黒革の手帖』について考察しようと思います。

 

 

 

メインテーマは「バックにある巨悪と対決する女」だけれど、ドラマ向けにするために、米倉涼子釈由美子の「女同士の戦い」にした前作。

今回は悪女っぷりということだけど武井咲はどうかしら。のし上がってきた銀座のママの凄味や海千山千の雰囲気がないけれど。

 

 

武井咲にない「男」の部分

この物語の軸は、男に媚びず、女の手ひとつで(悪い人間からカネをゆすって)上り詰める一種のサクセスストーリー。原作では女の戦いはその次。元子はある意味、男なんです。

武井咲には“悪いカネをゆすって成功してやる”というハングリーな「男」の部分がない。これは大きなエラー。米倉には男の部分が見えるので、私の想像する元子に合致しています。

最初の頃は米倉に凄味はなかったけれど、回を重ねるにつれ出てきたから武井咲もそうなるでしょうか……。

 

元子の「男」の部分とは

考えが男みたいなんですよね、女には考えつかない。そもそも銀行勤務時代の横領も男に貢いだわけでもない、自分の興す水商売のためだし。
女は横領だけして去っていくような気が。それを元手に……なんてリスキーなことはしません。やはり男だからかな、松本清張が。
その点から見ても、カッコいい女でいないとダメなんですよね。だから米倉はよかった。
男に媚びる商売なのに男から金を巻き上げる…というのは無理があります。女はどちらかしかできないので。


前作の波子役・釈由美子はぶりっ子過ぎてダメだったのですが、不思議とそこがウケました。波子は原作でも米倉版でも、拾ってもらったのに、米倉に恩をあだで返す女。
女のイヤな部分が表現できていましたが、仲里依紗がそこまで表現できるかな。

 

原作ではパッとしないブス、元子

原作の元子はたぶんオールドミス(行き遅れの独身女性のこと)でパッとしないブス。清張はブスのオールドミス設定が好きなんです。
ブスが故の「男を水商売で翻弄してやる、水商売で成功して男の上に立ってやる」という、コンプレックスから来る男への対抗心と「この黒革の手帖もあるし…フフ…」のような上昇志向がミックスされた系。

 

 「女」で勝負する波子

ドラマでのキモは「のし上がろうとする女同士のバトル」でしょう。
元子は上昇のためでも男とは寝ませんが、波子は「女」を使って勝者になるタイプ。

女を使わないってさすが。でも、現実の過去の横領事件では貢ぐ女ばかり、それが現実。イマイチ「事業を興す」にはドラマ性がないので女は共感しないなあと思いました。


個人的には、元子も女の部分を使って上がってもいいんじゃないかと。使わずに次々と恐喝を成功させるのはさすがに無謀。絶世の美女でもないし……。


映画『Wの悲劇』のセリフで「私はここまで来るのに女を使ったわ、あなたは使ってないの?」と有名な舞台女優を演じる三田佳子が声を荒げるシーンがあって「なんかわかる」と思ってしまいました。原作は夏木静子。やっぱり作者は女です。

元子と波子、どちらに共感する?

元子の対極の存在である波子は、商売の手腕も頭のよさもありません。あるのは、愛人から出資してもらい店を出したい精神だけ。
そこが決定的に違うから波子は元子を嫌った。そして愛人が、元子に恐喝されてしまう。メラメラと燃え盛る波子。

女は元子より波子の生き方に感情移入するかもしれません。元子のように財界の悪い男とわたり合えないから。

 

女の横領事件には陰に男あり

勤めていた銀行の金を横領し、知りえた架空口座リストを盾に、横領した事実をなきものにして銀行を去っていくのですが、最近はめっきり「伝票操作で横領」という犯罪も聞きませんね。ひと昔以上前はよくある犯罪でしたが、あれはまだ伝票操作がコンピュータ化されていない、されかかっていたけど伝票は手作業……の混在する時代だからうまくいったのです。
この原作発表後に、三和銀行オンライン詐欺事件が起こっています。
映画『紙の月』のモチーフになった事件ですね。くしくも犯人の名が素子で、元子と同じ読みですが、男に貢ぎ、破滅。横領には男がつきものなんですね。

 

手帖に効力あるの?

原作はそんなアナログ時代でしたから、架空口座リストを手書きで書き写しましたが、いま手帖ってのも……「デタラメ書いたんだろ、こんなの信ぴょう性がない」でおしまいのような。

せめて「このUSBにリストが入ってるわ」じゃないと(笑)

 

違うラストを期待

清張の作品はバッドエンドが多い。逃げ切ったというのがないので“悪は滅びる”ことが言いたいのかと思ったのですが、悪というほど悪でもない。もっと悪い人間はいる。だから原作の結末にしても米倉版にしても「もうダメなのかなぁ元子は」と思わせるだけ思わせて、その状態から逃げ切っているのかもしれない。

 

今回のドラマでは

  • 原作の結末……元子が裏切った愛人に報復される(かなり強烈)
  • 米倉版……警察が近づいたのを察知し逃亡してエンド(元子の勘違いの可能性も、しかしそうするとバッドエンドにはならない→バッドエンド匂わせ系。みんなで考えてね的な)


この二点とは違う結末を期待します。原作は救いのない内容だったので、悪女完全勝利の展開にしてほしいな、と思うのです。

 

 

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